第9章

御影怜司が眠りに落ちたのを確かめると、酒井初音は邪魔をせず、そのまま薔薇の温室を出た。

扉を出た途端、三村正明が低い声で言う。

「奥様」

その「奥様」には、心からの服従が滲んでいた。

初音は小さく頷き、まっすぐ階段を上がる。廊下に置かれていた諸々を片づけ、主寝室へ運び込んだ。

三村正明も、進んで手を貸す。

すべて終えると、初音は化粧台の前に腰を下ろした。薬草と薔薇の露、山の湧き水を自分で調合して作った美顔クリームを指先に取り、頬へ、額へ、丁寧に伸ばしていく。

さらに、鬱血と腫れを引かせる薬用のアイクリームを、濃い隈の上にそっと置いた。

――昔の自分なら、こんなものは「誰かのた...

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